そういう言い方はどういうことなんだろうか。はなはだ失礼だと思わないんだろうか。それともバカなんだろうか。
 人に対して「来た」と言うのである。

 今はっきり思い出せるだけで3回あった。

 その1は、家庭教師に行ったお子様の家である。
「宿題やったかい?」
 と訊いたら、
「やろうとしたら先生来た」
 とそのお子様は言うのだ。
 先生来たはないだろう。しかもなんかひどく憎々しげに、迷惑そうに言うのだ。こちらは頼まれたから、契約と言うのもあるから、時間を守って誠実に訪問しているのだ。いやがらせに不意に行っているわけじゃないのだ。

 その2は、あれは日暮里の飲み屋だった。
「何しに来た」
 そう隣にいるおばさん客が言うのだ。
 何しに来たはないだろう。酒飲みに行ったんだよ。
 性格の悪いおばさんで、自分のことばかり聞きもしないのにしゃべって。
 いやいや、こちらが悪かった。そんなうらぶれた安い店に入ったこちらが悪かった。
 飲み屋とか店とか、まずあたりをつけてから入って、入って不快な感じがしたらすぐに出ないとな。いいことを学んだよ。

 その3は、これもあるさえないスナック風の飲み屋だった。
 カウンターに座った私に、カウンターの中の女の人が、
「この前も来た」
 と言うのだ。
 なんだい来ちゃいけねえのかよ。
 そのせいか、近くに座っていた肉体労働者風のおじさんが、
「ここは高い。よそへ行こう」
 と、見も知らぬ私を誘って外にすぐに連れ出してくれた。
 その店にいたらもっと不快な思いをしていただろう。


「いた」
「見た」
 もバカの言う言葉だね。
「あなたを駅で見た」
 なんて言うバカがいた。
 見たはないだろう。天然記念物じゃないんだよ。
 お見かけしましたよ、などと言えないのか。

 教養がないんだよ。


 まあ見かけによらずいい人もいる。
 先日ある雀荘で、おじさん店員が、
「いつも後ろで拝見しておりますが、一緒に打つのは初めてです」
 と同卓になった私に言うのだ。
 「見てますが」じゃないんだよ。「拝見しています」なんだよ。
 これくらいの口がきけないようじゃ、まともな大人じゃないよなあ。な?

バカとつき合うな【電子書籍】[ 堀江貴文 ]
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